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「分かっちゃいるけど貯められない」のが老後資金
「人生100年時代」とよく言われますが、「楽しい老後」でなくては長生きしていても意味がありません。
そんな楽しい老後を悠々自適にエンジョイするために必要なのは、
- 健康
- 友達
- お金
の3つ。
どれも非常に大切ですが、特に重要なのがお金、「老後の生活資金」です。
十分なお金がない場合、「急な病気や介護状態になったらどうしよう」と不安が残りますし、友達と食事に行ったり、一緒に旅行に行くこともできません。
そこで年金制度の先行きが不透明な今、老後のためになんとかしてお金を貯めなければと思いはするのですが、「分かっちゃいるけど貯められない」のが老後資金だったりします。
そこで今回は、老後資金を蓄えるのに最適な
・つみたてNISA
・iDeCo(イデコ)
についてお話をしていきます。
「来月から貯金を始めよう」と「何度も」決意を繰り返しているあなたにピッタリの内容です。
ぜひ最後までお付き合いください。
ほとんど増えない上に「20%以上の税金を引かれる」預貯金
「よし、来月から月々¥10,000づつ貯金しよう!」と何度か目の決意をしたとします。
それが「奇跡的に」20年間続いた結果が以下の表です(年利0.05% 積立期間20年 1年複利)。
爪に火をともすようにして、欲望に負けず、コツコツと20年間頑張っても、利息は「¥11,990」!
し・か・も
この利息は「利子所得」となるため、ここから所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%、合わせて20.315%の税金が強制的に源泉徴収されてしまうのです。
従って実際に手元に残る利息は「¥9,554 」。
あなたの20年間の我慢と努力は「1カ月分の積立額より少ない」利息にしかならないのです。
月々の積立額 | ¥10,000 |
---|---|
積立金合計 | ¥2,400,000 |
利息 | ¥11,990 |
積立元利合計 | ¥2,411,990 |
税金(20.315%) | ¥2,436 |
税引き後受取額 | ¥2,409,554 |
利回り | 0.02% |
お上にも慈悲はある
微々たる利息からも税金をしっかりとさっ引く血も涙もない国税ですが、さすがにやり過ぎたと反省したのか、税メリットのある老後資金作りの仕組みを提案してきました。
それが「つみたてNISA」と「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」です。
お上にも慈悲はある!
「増えたお金は非課税!」つみたてNISAとは?
つみたてNISAとはNISA(少額投資非課税制度)に2018年1月から加えられた制度です。
NISAとは、「NISA口座(非課税口座)」を作り、そこから支出された年間120万円までの非課税投資枠で購入した株式や投資信託などの配当・譲渡益が「非課税」となる仕組み。
一方つみたてNISAは、国内外の株式や投資信託に年間120万円まで投資できるNISAに対し、年間の投資額を40万円までとより少額にし、その代わり非課税期間を最長20年間、非課税投資総額を800万円にして、「投資初心者の人がコツコツと長期間投資をする」ように設計された仕組みです。
つみたてNISA | NISA | |
---|---|---|
非課税投資枠 | 40万円/年 | 120万円/年 |
非課税期間 | 最長20年間 | 最長5年間 |
口座開設期間 | 2037年まで | 2023年まで |
非課税投資総額 | 最大800万円 | 最大600万円 |
対象商品 | 一定の要件を備えた投資信託 | 上場株式・投資信託等 |
つみたてNISAのメリット
増えたお金が非課税になる
通常の投資信託で増えたお金「分配金」からは、預貯金の利息と同様に20.315%の税金が源泉徴収されます。
つまり運用がうまくいって10万円増えたとしても、約8万円しか受取ることができないのです。
しかしつみたてNISAの場合は10万円を丸ごと受取ることができます。これは運用がうまくいけば行くほど、大きな差となって現れてきます。
下の図は先ほどの預貯金と同じように毎月¥10,000を20年間つみたてNISAで投資した場合のシミュレーションです。
投資信託としてはかなり堅実で控えめな年率3%想定になっていますが、それでも増えたお金は「¥876,606」!そして通常はここから引かれるはずの「¥178,083」(20.315%の源泉徴収)は引かれません!!!
これがつみたてNISA最大のメリットです。
出典:カブドットコム証券「つみたてNISAかんたんシミュレーション」
いつでも資金を払い出すことができる
つみたてNISAの投資対象は通常の投資信託です。そのためいつでも売却して現金化することが可能。
リストラなどで急にお金が必要になったりしても安心というわけです。
少ない金額で始められる
つみたてNISAは投資信託を選べば、なんと月々「¥100」からの投資が可能です。
またMAXでも年間40万円、つまり月々¥33,300ですから、「ドカッ」と儲けるというよりも、少ない金額でコツコツと運用するのに向いています。
金融庁による一定条件を満たした投資信託・ETFのみが投資対象
国内外の株式や投信信託と、幅広い範囲に投資できるNISAに比べ、つみたてNISAは金融庁が「しっかりと分散投資されていて、運用が安定しており、手数料が低い」と認めた投資信託またはETF(上場投資信託)にしか投資することができません。
つまり、大きく儲けることはできないが、元本割れのリスクが少ない投資先を金融庁が選んでくれているのです。
もちろん金融庁が元本を保証してくれているわけではないので、元本割れの可能性はゼロではありませんが、比較的安心・安全に資産運用ができる方法といえます。
つみたてNISAのデメリット
投資先が投資信託に限られる
つみたてNISAの場合、投資先は金融庁が認めた投資信託またはERFに限られます。
そのため国内外の株式に投資して大きな利益を得るということはできません。
しかし先ほどメリットのところで紹介したとおり、そのことがつみたてNISAの安全性につながっているのです。
年間の投資金額が少ない
つみたてNISAは年間40万円までしか投資することができません。しかし20年間続ければ800万円という資金を積み立てることが可能です。
投資は少額を長期に行うほどリスクが少なくなります。
「小さなことからコツコツと」、このデメリットも実はつみたてNISAのメリットなのです。
つみたてNISAに向いている人
投資初心者
投資初心者が最も困るのは「何に投資すれば良いのか分からない」ということです。
投資先は国内の上場株式だけでも3,600社以上、投資信託の数は6,000以上にものぼります。この中からリスクの少ないものを厳選し、自分の投資スタイルに合ったものを探すのは容易なことではありません。
しかしつみたてNISAの場合は投資先を金融庁が「140」ほどにあらかじめ絞ってくれていますから、投資初心者でも迷うことなく安心して投資をすることができます。
コツコツ投資を続けたい人
つみたてNISAのコンセプトは「少額を長期間で投資」です。そのためコツコツと投資を続けたい人に向いています。
比較的安全に老後資金を貯めたい人
つみたてNISAの投資先は、金融庁が「しっかりと分散投資されていて、運用が安定しており、手数料が低い」と認めた投資信託またはETFです。
そのためリスクがゼロとはいえませんが、比較的安全に投資・運用を行うことができます。
比較的安全に老後資金を貯めたい人にはピッタリです。
50代から老後資金を貯めたい人
次に紹介するiDeCoも老後資金を貯めるのに役立つ優れた仕組みなのですが、「積立が60歳までしかできない」という制限があります。
そのため50代から老後資金を貯めようとiDeCoを始めても、十分な資金を貯めることができません。
その点つみたてNISAにはそのような制限はありませんから、50代から70代にかけて資産運用をし、老後資金を蓄えることが可能です。
「節税できる自分年金」iDeCo(イデコ)とは?
国からのお詫び&サービス
まだ記憶に新しい「年金記録問題」や「年金改ざん問題」、そして65歳から70歳も視野に入っていると言われる年金支給開始年齢。
さらに少子高齢化は年々進んでおり、現在の年金システムをいつまで維持できるかは不透明な状況になっています。
そこで国が「年金問題については申し訳ない。国だけの力では十分な年金を支給することが難しいかもしれない。できれば”自分年金”を活用して凌いでもらえないだろうか。その代わり税金面でメリットがあるようにするから」とお詫びとお願いの意味を意味を込めて用意したのが「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)です。
確定拠出型年金とは公的年金制度に上乗せして給付を受ける私的年金の一つで、拠出額(掛金)を予め決めておき、その範囲内で「加入者ごと」に資産を運用。運用実績に応じた年金を将来受取ることができるというもので、会社が掛金を支払う「企業型」と個人が掛金を支払う「個人型」があり、iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称です。
iDeCoのメリット
所得税・住民税が節税できる
iDeCo最大のメリットは、掛金が全額「所得控除の対象になる」ということです。
iDeCoの月額掛金の上限は加入している年金によって異なります。
加入対象者 | 掛金上限 |
---|---|
第1号被保険者の加入者 | ¥68,000 |
第2号被保険者の加入者で、企業年金等に加入していない人 | ¥23,000 |
第2号被保険者の加入者で、個人型確定拠出年金に加入が認められている企業型確定拠出年金に加入している人 | ¥20,000 |
第2号被保険者の加入者で企業年金に加入してる人や公務員、私学共済加入者 | ¥12,000 |
第3号被保険者の加入者 | ¥23,000 |
ちなみに第1号~第3号被保険者とは以下のように分けられています。
第1号被保険者 | 自営業者、学生、フリーター等の人 |
---|---|
第2号被保険者 | 民間の会社員や公務員で、厚生年金保険や共済組合に加入している人 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている20歳~60歳までの配偶者 |
この掛金上限×12までの金額を、年間の所得額から控除してもらえるわけです。
実際にいくらくらい税金が安くなるかシミュレーションしてみます。
(年収600万円 52歳 男性 扶養している配偶者あり 19歳以上23歳未満の子ども1人)
なんと年間「¥54,800」も節税することができます。
そしてこの節税額は、iDeCoの掛金を支払っている間、ずっと続きます。
増えたお金に税金がかからない
iDeCoは運用先として、元本保証のある定期預金と、元本保証はないが運用でお金を増やすことができる投資信託を選ぶことができます。
一般的に定期預金も、投資信託も利息や分配金が発生すれば20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの場合はつみたてNISAと同様に、この「増えたお金に税金がかかりません」。
退職所得控除または公的年金等控除の対象となる
iDeCoで貯蓄・運用した年金を60歳で受取る場合、
・一時金として一括受取
・年金として受取
・一時金と年金の併用で受取
の3種類から選ぶことができます。
そして一時金は「退職所得控除」、年金は「公的年金等控除」の対象となります。
退職所得控除額は、
拠出年数 | 控除額の計算方法 |
---|---|
20年以下 | 40万円×拠出年数 |
20年以上 | 800万円+70万円×(拠出年数-20) |
となっています。
例えば30年iDeCoを続けていた人は、
800万円+70万円×(30ー20)=1,500万円 までなら税金がかかりません。
また公的年金等控除は64歳までは年間70万円、65歳以上は年間120万円まで非課税で受取ることができます。
トリプル節税効果がiDeCoの魅力
このように、
・掛金を拠出するときの「所得控除」
・増えたお金は非課税
・受取る時の「退職所得控除」「公的年金等控除」
と3度も税制面のメリットがあるiDeCo。利用しない手はありません。
iDeCoのデメリット
60歳になるまで引き出せない
iDeCoは老後の資金を貯めるのが目的です。そのため60歳になるまでお金を引き出すことはできません。
リストラなどにあって「どうしてもお金が必要だから」というような場合でも、お金を引き出すことはできないのです(非常に厳しい条件が付きますが、脱退一時金を受取ることができる場合があります)。
そのためギリギリの生活をしている人などには向きません。
ただ途中で毎月の掛金を減額したり(最低月額は¥5,000)、積立を一時中断することは可能です。
手数料がかかる
iDeCoは掛金を投資信託などで運用する仕組みのため、口座管理手数料や信託銀行手数料といった手数料が年間数千円かかります。
ただiDeCoを扱っている証券会社や保険会社によっては口座管理手数料が無料というところもあるので、比較してみることをおすすめします。
iDeCoに向いている人
自営業やフリーランスの人
自営業やフリーランスの人は第1号被保険者、つまり国民年金加入者です。
国民年金は将来の年金額が厚生年金加入者に比べかなり少なくなります。
それをカバーするためにもiDeCoに加入して、少しでも年金額を増やすべきです。
幸い第1号被保険者の場合、掛金は月額¥68,000、年間¥816,000も積み立てることが可能です。金額的にはラクではありませんが、将来豊富な年金額が期待できます。
高額所得者の人
高額所得者のかたは将来の年金額など気にしないかもしれません。
しかしメリットで紹介した「所得控除」は所得が高額になるほど効果が大きくなります。
「節税」という観点から、iDeCoは高額所得者の人に向いているといえます。
年齢の若い人
50代の人が「よし、老後のためにiDeCoを始めよう」と決意しても積立が終わる60歳まで数年しかありません。
しかし20代、30代の人であれば、たとえ月々の掛金は少額でも、長期間積み立てることで大きな金額を貯めることができます。その上運用も長期間行うことができるので、お金を大きく増やすことも期待できます。
iDeCoは現在の20代、30代といった若い人に、特におすすめしたい仕組みです。
つみたてNISAとiDeCo、やらない理由がない
つみたてNISAとiDeCoは国が公的年金をカバーするために用意したいわば「日本国推薦の老後資金準備システム」です。
そのため税制面などでかなりのメリットがあります。
老後資金はいくらあっても困ることはありません。この記事を読んだ方はぜひつみたてNISAやiDeCoの資料を取り寄せてみてください。
数十年後、悠々自適なシニアライフを送る可能性はそこから始まります。